NHK杯将棋トーナメント 河口俊彦五段対大山康晴王将

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囲碁・将棋チャンネルで昔のNHK杯将棋トーナメントを観る。
1981年の第31回大会から2回戦第10局、大山康晴十五世名人vs河口俊彦五段の一戦。

先手は河口五段。この時44歳とのこと。タバコを吹かす姿がダンディだ。今はタバコを吸う棋士が少なくなったので、将棋をしながらタバコを吸う映像を久しぶりに見てちょっと驚く。時代は変わるんだなと感慨深くなった。というか最近はタバコを吸う人自体TVに映らないような・・・松尾歩七段は喫煙者らしいがNHK杯でも吸っていたかな。

後手は大山十五世名人。1923年生まれとのことなのでこの時は58歳ぐらいか。王将という肩書き。TVで初めて見る大山十五世名人の印象はというと・・・なんだか異様。いや特に何か特徴があるわけではなく、自然に座っているだけなんだけど、何だろう、どっしりとしすぎていてそこだけ重い感じというのか、周りとの距離感がおかしく見えるというのか、とにかく不思議な存在感がある。まあこれは河口氏の本などを読んだ影響で、大山十五世名人に対し「巨人」というイメージを過大に持ってしまったせいかもしれない。こういうのは威厳と言えばいいのだろうか。威厳。今の世の中威厳というものははどこかに消えてしまったので、この言葉を思い出すのに時間がかかった。大山十五世名人の場合はただ偉そうという威厳ではなく、にじみ出る威厳という感じか。

対局は河口五段の飛車先不突右四間対大山十五世名人の四間飛車棋譜は取っておらずうろ覚えだがこんな局面で仕掛けた。

河口五段得意の戦法と解説の大内延介九段。大内九段の若い頃は見た目も弁舌もさわやか。ただ「大山が勝っても面白くもなんともない」などと辛口なのは昔からのようだ・・・
ここから河口五段がうまく攻め、徐々に後手陣を薄くしていくのだが、大山十五世名人の自然な対応が先手に決め手を与えず、結果的には先手の攻めが切れてしまった。最後は時間に追われて受けを間違えた河口五段の投了となった。

大山十五世名人の完勝というのだろうか。受けの強さ、読みの正確さはもちろんあるが、とにかく懐の深い将棋という印象で、この対局も攻めこまれてはいるものの負けそうな感じは全然しなかった。羽生三冠が本で大山十五世名人は手を読んでいない、大局観だけで指している、と評していたが、なんとなくそれがわかるような気がした。何か質が違うんだよね。よくわからないけど。
河口五段のほうは現代的でスマートな将棋を指す印象。解説で大内九段が「筋が良すぎて将棋が軽い」とさわやかに辛辣なコメント。こういう人は攻めに俗筋が混ざるくらいが良いらしい。

大山十五世名人の対局を見ることが出来たのは非常に良かった。現代の棋士には完全にいないタイプの棋士で、棋風だけではなく人格的にも稀有な人物だったんだなあと思った。結構強烈な印象を持ってしまったが、まあまだ一局しか見てないのでもっと対局を見れば印象が普通になるのかも知れません。


番組内での来週の予告が米長邦雄棋王島朗四段という組み合わせ。これも見たいんですけど。
実際の来週の放送は

80年代ベストセレクション 第32回大会 1回戦第18局 灘 蓮照九段 vs 真部一男七段 対局日:1982

とのことです。